74年前の恋文 – “バラ色の人生” 英国の大女優が歌う英語版 ピアフの原詩との違いとは

グレイシー フィールズのSPレコード

エディット ピアフの "La vie en rose" - 英語版 "Take me to your heart again"

英国の歌手で大女優のグレイシー フィールズが、1948年10月23日に英国で録音したSPレコードです。

“Take me to your heart again あなたの心の中にもう一度”

邦題があるわけではありませんが、敢えて付けてみました。というのも、この歌の原曲は、エディット ピアフが作詞して歌い、世界中で大ヒットしたシャンソン “La vie en rose バラ色の人生”にも関わらず、印象が全く違っているからです。

1946年に作られ、1947年10月には米国でピアフが披露した原曲。シャンソンの愛の世界を地でいくピアフの人生と詩と歌声は、いつも熱情的で官能的です。

米国でも初めはフランス語を直訳した英語版の “バラ色の人生”が作られたようですが、全くヒットしませんでした。当時の米国では、刺激的に感じる英語の詩は馴染まなかったのかも知れません。

受け入れられたのは、フランク エイトンが作詞した “Take me to your heart again あなたの心の中にもう一度”。多くの歌手によって歌われてヒットしました。

恋する想いをひたむきに語るピアフの原詩は、まるで密かに綴ったラブレターのようです。対してエイトンの詩は、別れを悔やみ憂いにも包まれた想い。

それぞれの歌詞に、当時の文化と愛情表現の受け入れられ方の違いを感じます。

ピアフとエイトンの詩を、ニュアンスが分かりやすいようにオリジナルで訳してみました。

当時の時代背景も想像しながら、時空を超えた生の振動をゼンマイの音から感じてみてください。

バラ色の人生 La vie en rose / Take me to your heart again ... 蓄音機のレコードで

オリジナル和訳

英語版 - Take me to your heart again
あなたの心の中に もう一度
やり直しましょう もう一度
許して 忘れて
あなたの心の中に もう一度

それから 後ろに置き去って
ずっと悔やんできた 暮らしを
愛しい人 時間を巻き戻して
涙を 笑顔に換えて
雨の後の 日差しのように

あなたが恋しい 夜も昼も
祈っている 愛していると 聞けるのを
そして もう二度と 別れない
あなたの心の中に 居られたなら
歌詞の朗読 by うしがら "本の秘密結社の準備室"
歌詞の朗読 by まーちゃん "マイラチャンネル"
仏語の原詩 - La vie en rose
その瞳に 目を伏せて
微笑みは 唇で見失う
これが ありのままの姿
わたしの心を 奪ったひと

彼の胸に 抱かれるとき
そっと低く ささやいて
バラ色の人生に 出会えるの

ささやきかける 愛の言葉
いつもくれる そのささやき
それが何か しているのね

心の中に 入り込んで
もう幸せの 一部だって
分かっている そのわけも

彼は私のため 私は彼のため 人生で
そう語り 誓ってくれた 命をかけてと

愛し合う夜は さらにもっと
大きな喜びが 心を埋める
悩み 悲しみ 消え去って
幸せ 幸せ 死ぬほどまでに
歌詞の朗読 by まーちゃん "マイラチャンネル"

経緯

  • 1894.8.30 フランク エイトンがロンドンで生まれる
  • 1915.12.19 エディット ピアフがパリで生まれる (本名 エディット ジョバンナ ガション)
    • 1916.4.3 ルイーギ (本名 ルイ グルエルミ)がバルセロナで生まれる
    • 1917.7.24 ボブ ファーノンがトロントで生まれる (本名 ロバート ファーノン)
    • 1946 “バラ色の人生”を作曲 (作詞 エディット ピアフ 作曲 ルイーギ)
  • 1947.10 ピアフが米国で初公演
  • 1948 ピアフがマルセル セルダン (元ボクシング世界王者)とニューヨークで出会い、“愛の賛歌”を作詞
    • 1948.10.23 グレイシー フィールズとボブ ファーノンが “バラ色の人生” (裏面 “永遠にいつまでも”)を英国で録音 (英語版 Take me to your heart again あなたの心の中にもう一度 作詞 フランク エイトン)
    • 1949.7.28 “愛の賛歌”が出版社協会SACEMに登録認定 (作詞 ピアフ 作曲 マルグリット モノー)
  • 1949.9.14 ピアフがニューヨークのナイトクラブ “ベルサイユ”で “愛の賛歌”を初披露
  • 1949.10.28 ピアフの恋人、セルダンが旅客機の墜落事故で死去
  • 1950.5.2 ピアフが “愛の賛歌”をパリで録音
    • 1962.11.11 フランク エイトンがロンドンで逝去
  • 1963.10.10 エディット ピアフがイタリアのリビエラで逝去
    • 1991.4.4 ルイーギがフランスのバンスで逝去
    • 2005.4.23ボブ ファーノンがチャンネル諸島のガーンジーで逝去

グレイシー フィールズのSPレコード ... 蓄音機でもっと

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