72年前のときめき - オペラ 魔笛から "なんと美しい絵姿" ひとめぼれするタミーノ王子
ぺトル ムンテアヌのSPレコード
モーツァルト作曲のオペラ "魔笛" - なんと美しい絵姿
ルーマニアのテノール歌手、ペトル ムンテアヌ。生まれた年の1916年は、第一次世界大戦の真っただ中でした。
ムンテアヌのテノール歌手としての生涯は、革命や戦争に翻弄されたとも言えます。
1940年、ソ連がルーマニアを占領した年に、ムンテアヌはブカレストの王立歌劇場でデビューします。その翌年にはドイツのソ連侵攻に乗じて、ルーマニアが第二次世界大戦に参戦しました。
この期間、ムンテアヌはルーマニアを離れ、ベルリンで音楽院に在籍していました。
そして、1947年、ルーマニア人民共和国が成立して独裁政権へと変貌していく年に、ムンテアヌはローマ歌劇場とミラノのスカラ座でデビューし、イタリアからヨーロッパへと名声を広めていきました。
ルーマニア革命により独裁政権を打倒して民主化に向かった年。その1989年を迎えることなく、前年の1988年7月18日に、ペトル ムンテアヌは故郷のルーマニアに戻ることなくイタリアのミラノで息を引き取りました。
ムンテアヌの代名詞とも呼ばれる楽曲、モーツァルトが作曲したオペラ “魔笛”から “なんと美しい絵姿”。ムンテアヌが英国で録音したのは、1951年3月。ルーマニアが独裁政権へと変貌した3年後のことでした。
オペラ “魔笛”は、今ではドイツ語ばかりが有名ですが、オリジナルの当時はイタリア語でした。
紹介するのは、ムンテアヌが扮するタミーノ王子が、悪魔にさらわれたパミーナの肖像画にひとめぼれするシーンです。
分かりやすいオリジナル訳を添えて。ゼンマイの音からムンテアヌの熱情を感じてみてください。
オリジナルの和訳
なんて美しい肖像画 見たこともないほどに 神々しく 新鮮な きっと恋に違いない 会いたくて 目の前に いてくれたなら この熱い想い 純粋な この気持ちを いったいどこへ うっとりと ただ抱きしめて 永遠に このそばに
歌詞の朗読 by まーちゃん "マイラチャンネル"
経緯
- 1751.9.1 エマヌエル シカネーダーがドイツで生まれる
- 1791.9.28 モーツァルトがオペラ “魔笛”を作曲 (台本: シカネーダー作)
- 1791.9.30 ウィーンのフライハウス劇場で “魔笛”の初演
- 1812.9.21 シカネーダーがウィーンで逝去
- 1878 オスマン帝国からの独立が承認され、ルーマニア王国が成立
- 1914.7.28 第一次世界大戦が勃発
- 1916.11.26 ペトル ムンテアヌ: ルーマニアのクンピナに生まれる
- 1918.11.18 第一次世界大戦が終結
- 1940 ムンテアヌ: ブカレストの王立歌劇場でデビュー。ベルリンで音楽院を継続
- 1940.6.26 ソ連がルーマニアを占領
- 1941.6 ドイツのソ連侵攻に乗じてルーマニアが第二次世界大戦に参戦
- 1947 ムンテアヌ: ローマ歌劇場とミラノのスカラ座でデビュー
- 1947.2.10 パリ条約締結。ルーマニアは次第に独裁体制に
- 1947.8 ドイツ人の実業家の娘、ヨハンナ ビンターと結婚
- 1947.12.30 国王の退位によりルーマニア人民共和国の共産党政府が成立
- 1951.3 ムンテアヌ: オペラ “魔笛”から “なんと美しい絵姿”を英国で録音
- 1988.7.18 ペトル ムンテアヌ: イタリアのミラノで逝去
- 1989.11.9 ベルリンの壁が崩壊
- 1989.12 ルーマニア革命により独裁政権を打倒。民主化