106年前のため息 - "愛しい人の名は" ときめく心を 最高峰のソプラノで

アメリタ ガリ=クルチのSPレコード

ベルディのオペラ "リゴレット" - 愛しい人の名は

蓄音機レコードが盛んに録音された時代に大人気を博したソプラノのひとりがアメリタ ガリ=クルチです。ソプラノの中でもコロラトゥーラという歌唱法で才能を発揮しました。細かく速い音符が連なっている節で、声を転がすように歌うことでドラマチックに彩る技法です。

その技法が特徴的なオペラが、正にガリ=クルチが得意としたジュゼッペ ベルディの “リゴレット”のジルダ役でした。

1916年11月18日、ガリ=クルチはシカゴの公演で、“リゴレット”のジルダ役を演じて大好評を博します。初めての米国デビューでの大人気により、そのままシカゴ オペラ協会と契約しました。

同年、ビクター トーキングマシーンとレコーディング契約を締結。年が明けた1917年2月2日には、ベルディのオペラ “リゴレット”から “愛しい人の名は Caro nome che il mio cor (ジルダ役)”をニュージャージーのカムデンスタジオで録音しました。

この録音は、コロラトゥーラを得意とするガリ=クルチの最高峰の歌唱とも評されます。衝撃の米国デビューから、僅か2か月半。ガリ=クルチの高揚と興奮が響いてくるようです。

オリジナルの和訳を添えて。当時の振動をゼンマイの音からお楽しみください。

愛しい人の名は Caro nome che il mio cor ... 蓄音機のレコードで

道化師 リゴレットの美しい娘 ジルダ。純粋無垢に育ったジルダは、プレイボーイのマントバ公爵の偽名で装った嘘と巧みな誘惑の言葉に簡単に騙されて恋に落ちてしまいます。

そこで歌うのが “愛しい人の名は Caro nome che il mio cor”。

衝撃の米国デビューから僅か3か月。初心なジルダの純愛を、初々しいソプラノの歌声で。ゼンマイの音から当時の振動を感じてください。

オリジナルの和訳

愛しき お名前
心が初めて ときめいて

愛する喜び
思い出すこと 絶え間なく

喜び 想いに 浸るたび
あなたの元へ 飛んで行く

この ため息までもが
愛しき お名前 あなたのもの

思い出すこと 絶え間なく
喜び 想いに 浸るたび
あなたの元へ 飛んで行く

この ため息までもが
愛しき お名前 あなたのもの

思い出すこと 絶え間なく
喜び 想いに 浸るたび
あなたの元へ 飛んで行く

この ため息までもが
愛しき お名前 あなたのもの

原詩 Italian lyrics

Caro nome che il mio c(u)or(e)
f(ac)esti primo palpitar(e).

Le delizie dell'amor(e)
mi de(v)i sempre rammentar(e).

Col pensier(o) il mio desi(de)r(io)
a te sempre volerà.

E fin(o) l'ultimo mio sospir(o),
Caro nome, tuo sarà.

※ () ellipsis

経緯

  • 1882.11.18 アメリタ ガリ=クルチがイタリアのミラノで生まれる
    • 1889.1.15 ホーマー サミュエルズが米国オークレアで生まれる
  • 1906 アドリア海に面したトラーニ (長靴の踵辺り)でデビュー (ベルディ “リゴレット”のジルダ役)
  • 1908 マルケーゼ ルイジ=クルチ (小説家/画家)と結婚
  • 1916.11.18 “リゴレット”のジルダ役で米国デビュー (シカゴ)し、大好評。シカゴ オペラ協会と契約
  • 1916 ビクタートーキングマシーンとレコーディング契約
  • 1917.1.25 リゴレットから “美しい恋の娘よ Beilla figlia dell’amore” (カルテット)をニューヨークで録音。テナー: エンリコ カルーソ; バリトン: ジュゼッペ ド ルーカ; ソプラノ: アメリタ ガリ=クルチ; コントラアルト: フローラ ペリーニ
  • 1917.1.31 “クラリ: ホーム、スイートホーム” (詩 ジョン ハワード ペイン 曲 ヘンリー ビショップ)をニューヨークで録音
  • 1917.2.2 ジュゼッペ ベルディのオペラ “リゴレット”から “愛しい人の名は Caro nome che il mio cor”をニュージャージーで録音 (ジルダ役)
  • 1919.3.7 ジュゼッペ ベルディのオペラ “椿姫”から “そは彼の人か Ah! Fors' é lui”をニュージャージーで録音 (ビオレッタ役)
  • 1920 マルケーゼ ルイジ=クルチと離婚
  • 1921 伴奏者のホーマー サミュエルズと結婚
    • 1921.1 シカゴ オペラ協会が倒産。シカゴ シティオペラ カンパニーを経てシカゴ リリック オペラに。
    • 1921.8.2 エンリコ カルーソがナポリで逝去
  • 1921.11.14 ニューヨークのメトロポリタン歌劇場でデビュー (“椿姫”のビオレッタ役)
  • 1930.1 ガリ=グルチ: オペラの舞台から引退
    • 1950.8.26 ジュゼッペ ド ルーカがニューヨークで逝去
    • 1956.10.14 ホーマー サミュエルズが米国サンディエゴで逝去
  • 1963.11.26 アメリタ ガリ=クルチが米国サンディエゴのラ ホヤで逝去
    • 1975.9.23 フローラ ペリーニが逝去
  • 1988 スタジオジブリの映画 “蛍の墓”のエンディング曲にガリ=クルチが歌った “ホーム, スイートホーム”を使用

アメリタ ガリ=クルチのSPレコード ... 蓄音機でもっと

リゴレットのSPレコード ...蓄音機でもっと

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です