75年前の郷愁 - 英国フォークソング "Come you not from Newcastle ?" 忘れがたき故郷
ベンジャミン ブリテン と ピーター ピアーズのSPレコード
紹介するのは、“Come you not from Newcastle?”。オリジナルの曲は、昔から歌われているイギリス民謡です。
1866年に発行された ジョン フラーの “歌の本 – 最高の詩人と音楽家が残した歌詞と曲”にも収載されています。ジョン フラーはロンドンのキングス大学の声楽の教授で、イギリスのフォークソングをまとめたこの本は、”フラーの歌の本”として知られています。
歌っているのはピーター ピアーズで英国のテノール歌手。そしてピアノ演奏はベンジャミン ブリテン。世界的にも有名な英国を代表する作曲家で、1937年に二人が出会って以降、ピアーズの生涯のパートナーでした。
原曲の歌詞は "him"で男性に向けた歌ですが、ピアーズは敢えて "her"と女性に向けて唄っているところに複雑な想いを感じます。
英国が第二次大戦に参戦すると、二人はニューヨークに移住します。しかし故郷を忘れられず、1942年に英国のオールドバラに戻ってきました。
終戦後の1947年8月27日、今回紹介する曲を含む、英国のフォークソング 3曲をロンドンで録音します。
音楽と故郷をこよなく愛した二人は、1948年6月5日にオールドバラ音楽祭を開催。オールドバラで一生を過ごしました。
オリジナルの訳を添えて。故郷愛に満ちた二人の振動を、ゼンマイの音から感じてください。
ニューキャッスルから来てはくれないの? Come you not from Newcastle? ... 蓄音機のレコードで
オリジナルの和訳
ニューキャッスルから 来てはくれないの? 行ってしまった きりかしら? 本当に愛していたことも 知らずに 美しい港を 後にして 私の想いなのに 私は愛しては いけないの? 私の想いなのに 私を愛しては くれないの? あの人を追いかけては いけないの? 愛することは 自由なはずなのに
経緯
- 1748.3.5 ウィリアム シールド: 英国ダーハムで生まれる
- 1730-1830 産業革命
- 1829.1.25 ウィリアム シールド: ロンドンで逝去
- 1866 ジョン フラー: “歌の本 – 最高の詩人と音楽家が残した歌詞と曲"を発刊
- 1913.11.22 ベンジャミン ブリテン: 英国サフォーク州ローストフトで生まれる
- 1935- GPOフィルム・ユニット社(イギリス郵政局映画部)で記録映画の作曲に従事
- 1937.8.25 ザルツブルク音楽祭で初演された “フランク・ブリッジの主題による変奏曲”で国際的な名声
- 1937 生涯のパートナーとなるテノール歌手、ピーター ピアーズと出会う
- 1939.6-1942.3 英国の第二次大戦への参戦でピアーズと共にニューヨークに移住
- 1942 サフォーク州の詩人の詩に郷愁を感じて英国オールドバラに戻るが、兵役を拒否
- 1946.2.21 “Come you not from Newcastle ? - ニューキャッスルから来てはくれないの ?”を作曲
- 1947.8.27 英国で “フォーク ソング集”を録音 (ピアノ ブリテン, 歌 ピアーズ)
- 1948.6.5 第1回 オールドバラ音楽祭を開催
- 1976.12.4 ベンジャミン ブリテン: 英国オールドバラで逝去
- 1986.4.3 ピーター ピアーズ: 英国オールドバラで逝去