75年前の懐郷と愛情 - 英国を愛する二人 伝統的フォークソングの奏で

ベンジャミン ブリテン と ピーター ピアーズのSPレコード

牧童 | ニューキャッスルから来てはくれないの? ... ベンジャミン ブリテン

牧童 "The ploughboy" - イギリス民謡

ウィリアム シールドが1800年頃に作曲して、ベンジャミン ブリテンが編曲した “牧童”。牛を引いて牧場を耕す田舎の少年の歌です。

イギリス民謡ということから、自然に満ちた風景の中、牧場で暮らすのどかな様子を歌ったフォークソングかと思いきや、ものの見事に裏切られます。

1748年3月5日に英国ダーハムの田舎町に生まれたウィリアム シールド。ニューキャッスルで音楽を学び、1829年1月25日に大都会のロンドンで亡くなりました。

シールドが生きた時代は、英国で始まった産業革命の期間 (1760-1830年)に完全に重なります。世の中が労働者階級と貴族や地主階級とに分かれ、自分の畑を持っていた農民が次第に労働者に変わっていった時期です。

“牧童”は、資本家や政治家の当時の様子を皮肉たっぷりに歌っているのです。

内容をイメージしやすいようにアレンジしたオリジナルの和訳を添えて。ゼンマイの音から時代の振動を感じてみてください。

牧童 The ploughboy ... 蓄音機のレコードで

オリジナルの和訳

干し草あたまの カウボーイ
想像通りの 素朴さで
次は陽気な 農耕ボーイ
牧場じゅうに 口笛吹いて
だけど今では イケてるバイト
毛織のレースで 颯爽と
そのうちなるさ バイトリーダー
笑顔で フェイスケア

会計係に 昇進したら
商社マンの 請求処理
社長の金庫は 空っぽで
自分のポッケは いっぱいさ
荷馬車に乗って くつろげば
これはもう すごい奴さ
すごい すごい すごい奴

牧場で 口笛吹いてた ちっぽけな
牧童なんて 忘れなよ

選挙の票は 金で買い
それから銭を ためこんで
議会の支持も とりこんで
自分に投票 させるのさ
得することなら 何だって
反対なんて しないのさ
賛成票は 売り切れで
そしたら反対票も 売り込むさ

ジョーク 説教 寸評入れて
耳に心地いい 演説かます
足が疲れて しまったら
貴族席に 座ればいい
法廷でも 財界でも
これはもう すごい栄誉さ
すごい すごい すごい奴

牧場で 口笛吹いてた ちっぽけな
牧童なんて忘れなよ

ニューキャッスルから来てはくれないの ? "Come you not from Newcastle ?" - イギリス民謡

1930-40年頃、ストックポート近くにあったレコード店、ベイツ。そのジャケットカバーに収められていたレコードは、1946年2月21日に英国で録音された英国のフォークソング集でした。

オモテ面は、"フォギーフォギーデュー"。ウラ面には、"牧童 The ploughboy"と共に、ベンジャミン ブリテンが編曲した "ニューキャッスルから来てはくれないの? Come you not from Newcastle ?"が収められています。

情感あふれる歌声を、もっと感じてみたいのですが、しっくりくる日本語の歌詞は見つからないのでオリジナルで訳してみました。

もっと当時の時代背景を知らないと、ピアーズが伝えたかった想いや、このレコードを持っていた方がどんな気持ちで聴いていたのかを感じ取れていないのかも知れません。

でも "牧童"の歌詞の内容と産業革命の時代背景を考えて、その様子を日本に置き換えてみると何となく想像できます。

ブリテンやピアーズが愛した当時のイギリスの田舎街を想像して、その頃、SPレコードを実際に聴いていたマンチェスターの方の生活も空想してみてはいかがでしょうか。

ゼンマイの音とSPレコードの溝から流れる振動が、時空を超える手伝いをしてくれます。

ニューキャッスルから来てはくれないの ? Come you not from Newcastle ? ... 蓄音機のレコードで

オリジナルの和訳

ニューキャッスルから 来ては くれないの?
行ってしまった きりかしら?
本当に愛していたことも 知らずに
美しい港を 後にして

私の 想いなのに
私は愛しては いけないの?
私の 想いなのに
私を愛しては くれないの?
あの人を追いかけては いけないの?

愛することは 自由なはずなのに

ベンジャミン ブリテンとピーター ピアーズのSPレコード ... 蓄音機でもっと

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