75年前の懐郷 - イギリス民謡 "フォギー フォギー デュー" - 世間を騒がせた歌とは

ベンジャミン ブリテン と ピーター ピアーズのSPレコード

フォギー フォギー デュー ... イギリス民謡

SPレコードと演奏家の背景

マンチェスターの南東ニューミルズにあったレコード店、ベイツのレコードジャケットに収められていたのは、ピーター ピアーズが歌う英国のフォークソング ”フォギー, フォギー デュー"。

ベンジャミン ブリテンとピーター ピアーズは、1939年には故国を後にしながら、わずか3年後には、再び故郷の英国サフォークに戻ります。そして、ふたりはその後の一生をサフォークで過ごすのでした。

ニューヨークで読んだサフォーク出身の詩人の詩に郷愁を感じて、英国サフォーク州のオールドバラに戻ってきたのが1942年です。そして、この英国のフォークソング集を録音したのが1946年でした。

作曲家でピアニストのブリテンと、テノール歌手のピアーズが、共に愛する港町の故郷で音楽活動に没頭していたこの時期。ふたりにとっては、最も充実した時期だったのではないでしょうか。

このレコードのウラ面には、やはり英国のフォークソング "牧童 The ploughboy"と共に、ブリテンが作曲した "ニューキャッスルから会いにきてはくれないの? Come You Not from Newcastle?"が収められています。

曲の説明

オリジナルの歌は英国ではとても有名で、誰でも知っている歌のようです。お酒が入ると歌われたり、替え歌にされたりするなど、本来、あまり上品な歌とは捉えられていなかったようです。

地域ごとに様々なバージョンがあり、ブリテンの曲は、彼の故郷のサフォークの歌がベースになっているようです。

そんな伝統的なイギリス民謡を上品に仕上げ、テノール歌手のピアーズが歌うことで上等なラブソングにも聴こえます。

録音されたのは1947年8月27日。色々と暗示させる内容から、BBCがラジオ放送を禁止したり、米国の州によっては歌って逮捕される歌手が出たりするなど、当時は相当にお騒がせな曲だったようです。

せっかくなのでオリジナルの和訳を添えて。当時の雰囲気に浸りながら、どんなストーリーを想い描くでしょうか。ゼンマイの音から感じてみてください。

フォギー フォギー デュー Foggy foggy dew ... 蓄音機のレコードで

オリジナルの和訳

独身時代に 一人暮らしで 織物商社に勤めていた
たった一度 たった一度だけ 犯した過ち
かわいいメイドと 関係を持った
冬 そして夏にさえも
そして一度 たった一度だけ 犯した過ち
霧の 霧のしずくから 彼女を匿ったこと

ある晩 ぐっすり眠っていると 寝室に彼女がやって来て
顔をベッドに横たえて 泣きだした
ためいきをつき 泣き叫び 死にそうなほどに 罵った
いったい私に どうしろと言うの?
だからベッドに 引き込んで 彼女の顔を覆っていた
ただ彼女を 霧の 霧のしずくから 匿うために

独身時代に 息子と住んで 織物商社に勤めている
どんな時でも 彼の眼をみつめると かわいいメイドを思い出す
冬のこと そして夏のことさえも
何回も 何回も 腕に抱きしめた
ただ彼女を 霧の 霧のしずくから 匿うために

フォギー デュー ... 民衆を勇気づけた古のアイルランド民謡

ブリテンとピアーズの曲とは異なる "フォギー デュー"というアイルランド民謡があります。

古いアイルランド民謡 “ムアロッホ ショア”のメロディを、北アイルランドの牧師が替え歌にした曲です。1916年、アイルランド独立のきっかけになったイースター武力蜂起で民衆を勇気づける歌として歌われました。アイルランドの方にとっては、とても大切な曲なのでしょう。

ベンジャミン ブリテンとピーター ピアーズのSPレコード ... 蓄音機でもっと

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です